風営法改正(令和7年6月28日施行)無許可営業の罰金最大3億円
昨今、一部メディアやSNS等でも話題になる事が多かった悪質ホストクラブ店で飲食又は遊興をした女性が売掛金名目で多額の債務を背負わされ、その返済の為にホストやホストクラブ店から売春や性風俗店で働く事を要求される等の事案が発生している問題をはじめとする風俗営業をめぐる情勢を踏まえ、令和7年5月28日、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部を改正する法律」が公布され、一部の規定を除き、令和7年6月28日から施行されることとなりました。
改正の概要は以下の通りです。
・接待飲食営業に係る遵守事項・禁止行為の追加
・性風俗店によるスカウトバックの禁止
・無許可営業等に対する罰則の強化
・風俗営業からの不適格者の廃除(令和7年11月28日施行)
ただし、今回の改正は「ホストクラブ店」に限定した改正では無く、風俗営業全般又は接待飲食業全般についての改正となりますので、当然「キャバクラ店」も対象となります。
主な改正点を解説していきます。
目次
接待飲食営業に係る遵守事項・禁止行為の追加
客の正常な判断を著しく阻害する行為の規制(風俗営業1号が対象)
・料金の虚偽説明の禁止
・恋愛感情を利用した営業の一部を禁止
・客が注文していない飲食、サービスの提供を禁止
以上については罰則はありませんが、行政処分の対象となります。
行政処分には「指示処分」「営業停止」「許可取り消し」があります。
恋愛感情を利用した営業とは
いわゆる「色恋営業」です。
客がキャストやホストに恋愛感情や好意を持っていて、
キャストやホスト側もその客に対して同様の感情を持っていると客が誤信をしている。
更に、客が誤信をしている事をキャストやホストが認識している。
この状況を利用した営業が「色恋営業」となりますが、
「色恋営業」自体を禁止している訳ではありません。
禁止されているのはこの状況に乗じて
①客が飲食や遊興をしなければ、当該客とキャストやホストとの関係が破綻すると告げること。
例「シャンパンを入れてくれないともう会えない」等
②キャストやホストがその意に反して受ける降格、配置転換その他の業務上の不利益 を回避するためには、当該客が飲食や遊興をすることが必要不可欠である旨を告 げること。
例「〇〇円以上使ってくれないと罰金を払わされる・ナンバーワンでいられなくなる」等
接待飲食営業を営む者の禁止行為(風俗営業1号が対象)
・売掛金等、料金の支払をさせる目的で、当該客を威迫して困惑させること。
・威迫や誘惑による料金の支払等のため売春(海外売春を含む)、性風俗、AV出演等を要求すること。
以上に違反した場合は6ヵ月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金又はその両方となります。
性風俗店によるスカウトバックの禁止
性風俗店を営む者が、スカウト等から求職者の紹介を受けた場合に紹介料を支払うことを禁止。
紹介料を受け取る側でなく、支払う側への規制です。
紹介した本人に対してだけでなく「第三者」に対しての支払い、
紹介を受けた者だけでなく「第三者」をしての支払い、
金銭だけでなく「財産上の利益」の提供も禁止されています。
無許可営業等に対する罰則の強化
(風俗営業1~5号が対象)
今回の法改正の目玉のひとつと言えるでしょう。
風俗営業の無許可営業、風俗営業の名義貸しの罰則が大幅に強化
旧風営法では2年以下の拘禁刑もしくは200万円以下の罰金又はその両方となっていましたが、
営業規模の大きいホストクラブ等では200万円以下という罰金では抑止には弱すぎる等の事情で
2年以下の拘禁刑 → 5年以下の拘禁刑
200万円以下の罰金 → 1,000万円以下の罰金(個人の場合)
3億円以下の罰金(法人の場合)
以上に変更されました。
風俗営業許可を取得せずに営業をしているガールズバー、コンカフェ等でも接待を行っているとみなされた場合には無許可営業に該当します。
何をもって接待とみなされるのかは、やや曖昧な部分もありますがガールズバー、コンカフェといった性質からすると、ほとんどは接待とみなされる行為をしていると思われますので注意が必要です。
参考リンク▶接待行為とは?
メンズエステ等の禁止区域営業の罰則強化
(メンズエステに限った改正ではありません。)
日本国内に店舗型性風俗特殊営業を新規で営業できる場所はほとんどありません。
風営法、都道府県条例によって「禁止区域」「禁止地域」が定められ強く規制されています。
もちろん健全なメンズエステ店であれば問題はありませんが、
その営業実態が店舗型性風俗特殊営業とみなされてしまった場合は
店舗型性風俗特殊営業の禁止区域(禁止地域)営業に該当し以下の罰則の対象となります。
個人の場合
5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下又はその両方
法人の場合
5年以下の拘禁刑もしくは3億円以下の罰金又はその両方
風俗営業からの不適格者の廃除
風俗営業の許可に係る欠格事由の範囲を拡大
これまでは警察の立ち入り調査を受けた後、
営業許可取り消し等の処分を受ける前に自主的に廃業をする事で処分から逃れる事が可能でした。
また、営業許可取り消し処分を受けた営業者が、仲間やグループ会社の名義で再度許可を取得し、実質的には取消し処分を受けた後も継続して同じ営業者が風俗営業を行うという事も可能でした。
こういった処分逃れを防ぐため、その他にも不適格者に風俗営業を行わせない為にも以下も欠格事由に加えられました。
・親(子)会社、兄弟会社が営業許可取り消された法人
・警察の立入調査後に許可証の返納(処分逃れ)をした者
・暴力的不法行為を行うおそれがある者がその事業活動に支配的な影響力を有する者
欠格事由に該当する者は風俗営業者となることは出来ず、
既に風俗営業者となっている場合は許可が取り消されます。
最後に
今回の風営法の改正を受けて困惑されているのは、深夜営業許可(届出)でガールズバーやコンカフェを営業されている方々ではないでしょうか。
風俗営業となると営業時間の制約があり、また要件次第ではそもそも許可が取れない場合もあります。
しかしながら今後グレーゾーンでの営業はかなりのリスクと思われます。
行政書士事務所では風営法関連手続きを専門で行っています。
風俗営業許可申請及び要件の調査なども代行いたしますので、お気軽にご相談ください。
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